『ADHDなどの発達障がい』の可能性を疑う子どもも中にはいるかもしれません。ただ、そんな疑問を持った場合でも、保護者への伝え方には十分気をつけましょう。

保育士さんの悩み.com

子どものありのままの姿を保護者へ伝える難しさ

保育士の仕事は、子どもの対応はもちろん『保護者との信頼関係を築いていく』という事も大切な要素になってきます。特に家庭と連携して上手く保育をしていくには、『園での子どもの様子』『今日あった出来事』などを保護者の方に詳細に伝えていくことが重要です。

子どもの変化や落ち着きのなさが気になり、『ADHDなどの発達障がい』の可能性を疑う子どもも中にはいるかもしれません。ただ、そんな疑問を持った場合には、保護者への伝え方に十分気をつけましょう。私も以前そういった難しい局面で失敗した経験があります。

『落ち着きが無い』『我慢ができない』Sちゃん

私が受け持った3歳のクラスで『Sちゃん』という子がいました。この子はとても落ち着きがなく、我慢することが苦手で、すぐに癇癪(かんしゃく)を起こしていました。

他の子どもが『順番待ち』や『我慢』『相手に伝える』ということを、少しずつ出来るようになっていっている中、自分の思い通りにいかないことがあると、すぐに『物を投げる』『友達をぶつ』『激しく泣く』など、他の子と比べて少し変わった様子が感じられました。ちょうどその頃、子どもたちの家庭訪問があったので、Sちゃんの変わった一面を保護者へ正直に伝えるべきかとても悩みました。

Sちゃんのお母さんはベテラン保育士...

本来なら、ありのままの子どもの姿を保護者の方へ伝えるべきところですが、Sちゃんのお母さんは、困ったことにベテラン保育士さんでした。

私はそのプレッシャーもあり「Sちゃんのお母さんより私のほうが保育歴が少ない...」「私がSちゃんの本当の気持ちを理解しきれていないだけなのでは...」「Sちゃんの環境がたまたま悪かっただけなのではないか...」という自分への不安と自信のなさで、肝心の『落ち着きが無い』『我慢ができない』という、Sちゃんのありのままの姿を正直にお話する事ができませんでした。

さらにそのお母さんは、思ったことをズバズバ言う方だったので『クレームがきたら大変!』という気持ちもあり、私にブレーキをかけました。

Sちゃんの良いところしか伝えなかった...

家庭訪問では、『頑張っていること』『よくできていること』を中心にお話したので、Sちゃんのお母さんからすると『自分の子どもは特に問題もなく、よく出来る子だ』と思われたのではないかと思います。(実際にSちゃんは、絵を描く、歌を歌うなどは他の子どもより長けているところがありました)

そのため、私が担任をした一年はそれで良かったのですが、Sちゃんが進級すると問題が起こりました。

どうしてありのままの姿を伝えなかったんだ!

前年に私が『Sちゃんの良いところ』しか伝えていなかったので、新しい担任が家庭訪問でSちゃんの『ありのままの姿』をお母さんに伝えたところ「そんなことは聞いてない!」と怒られたようでした。

当然ながら「Sちゃんの様子のことでお母さんと相談したかったのに、理解してもらえなかった!」「何故ありのままの姿を伝えなかったんだ!」と、私もSちゃんの担任から責められました。


その後、主任の先生も交えて話し合いを行い『保護者の方には、子どものありのままの姿を伝えないと時に誤解を招いてしまうことがある。どういう形であれ、伝えるべきことはきちんと伝えるようにしよう』ということになりました。

保護者との信頼関係

今思えば、お母さんも心のどこかで『Sちゃんの異変』を感じていたのかもしれません。それが、保育士さんから『園での様子は大丈夫』と伝えられていたので、不安な気持ちもなくなり、保護者と保育士のあいだに『認識のずれ』が生じてしまったんだと思います。

当時の私は自信もなく、きちんと伝えるということが苦手でしたが、お母さんとの信頼関係がしっかりと築かれていれば、Sちゃんのこともすんなりお話できたのかもしれません。この経験から保護者との信頼関係を築いていくということの大切さを痛感しました。

『良いところ』を伝えながらも、『保護者の不安なところ、疑問に思うところ』なども聞き出し、保護者と一緒に子どもの成長を見守っていきましょう。


子どもの発達について疑問点や不安なところがあれば、保護者の方にもお話をするということはとても大事なことですが、同時に非常にデリケートな問題なので、言葉を選びながら慎重に進めていく必要があります。このお話のSちゃんも、結局『発達障がい』ではありませんでした。

私たちは保育士であって療育施設の支援員さんや技術員さん(心理担当の先生など)、医師ではないので、具体的な診断名(ADHDやアスペルガーなど)は言葉にしない方が良いのではないかと個人的には思っています。

私の場合は「集団で活動している時になかなか入ってこられない」とか「カッとなったらすぐ手が出やすいけれども、おうちではどうですか?」といったように、園での子どもの様子を具体的に伝えていき、保護者の方に『ちょっと疑問に思ってるよ』『発達に問題があるかもしれないよ』と感じさせる、気づかせるようにしています。その中で保護者の方が「私の子どもはもしかしたら発達に遅れがあるのでしょうか?どうですか?」など疑問に思われたら、園長先生や主任先生と一緒にお話をして『療育機関などに相談してみることを進める』という方法を行っています。

どちらにしても、発達に遅れがある子どもに対して正しく手立てをすることは、子どもの年齢が小さければ小さいほど、成長した時に社会で生活がしやすいと言われます。早期発見という意味でも、『保護者の方に、ありのままの子どもの姿を伝える』ということは、とても大事なことです。


[関連記事]
スポンサーリンク
幼稚園教諭、保育士さんにおすすめの転職サイト
保育ひろば